特別加入・1人親方

 労災保険は字のとおり労働者の災害があったときの保険になります。ということは会社を社長1人でやっているとき社長は経営者で労働者ではありませんので、この法律の対象にならないので、労働中の災害の補償が受けられないことになります。

 しかし1人社長は自分で現場に行き働くことがほとんどですので実態に合いません、ということで特別加入制度があります。この制度は、個人で加入することができません。事務組合という団体を通して加入することになります。事務組合というのは、土建組合や商工会などですので身近にあります。会計事務所に社会保険労務士がいるのでしたら、社会保険労務士の組合をとおして加入することもできます。

 この制度は、事業主が自分の補償を額を選んで掛金を調整できます。けがで働けないときたくさんもらいたいときは掛金を多くすればよいことになります。例えば建設業の方で1日補償1万円としたいときは、10000×365×19/1000=69350円が年間保険料になります。

 1人親方とはその名前の通り1人でやっている個人事業者や1人でやっている会社の社長がイメージできます。1人親方の個人事業者が特別加入で事務組合で加入していたとき、そのまま会社になってもその特別加入を継続できるかということが問題になります。従業員がいないなら実質1人親方なので問題はないのですが、会社組織にしてから従業員を採用し新しく労災に加入するときは、1人親方ではなく中小企業の事業者の立場になりますので、今まで加入していた番号と違う番号=従業員が労災に加入する番号を取ることになります。このあたりが少しややこしいところなので、1人親方が特別加入しているときで、会社になってから労災加入をするときはご注意が必要です。といっても通常は事務組合が確定清算を含め何も問題なく手続きをしてくれると思います。

遺族年金

 年金の仕組みは複雑です。それは改正が多いので生まれた年によって変わるからです。また支給額なども毎年変更されてしまいます。平成27年4月からの基礎年金支給額は年間で78万円くらいです。

 題の遺族年金は、従業員の方が加入しているとき死亡すると例えば奥さんに支給されるものです。国民年金では18歳までの子供がいないと支給されませんが、社会保険に加入していると子供がいなくても支給されます。条件はいろいろありますが従業員の方からすれば家族への所得補償として重要なものになります。また加入したらその月から300月加入しているものとして遺族年金を計算してくれますので勤めてすぐでも保険がきくことになり安心です。

 上記は従業員の方から見た場合ですが、会社設立ですので社長から見るとどうなるかということになります。

 遺族年金が奥様の所得補償になることは従業員の方と同じです。所得補償の金額ですが、社長の給与が掛金の金額の基礎になりますから社長の給与が高いほうが所得補償は多くなります。しかし掛金が高くなります。奥様は遺族年金をもらうとき、自分も厚生年金に加入しているときは、遺族年金と多いほうを選択することになります。社長の給与が高く奥様が扶養であれば奥様は社長の遺族年金をもらえばそれでよいのですが、奥様も少しだけ厚生年金に加入していると計算方法は違いますが、その分は支給停止となります。つまり加入していてももらえない部分が出てくるということになります。掛け捨てになります。基礎年金部分はもらえますので奥様は自分の基礎年金+遺族年金といった感じです。

 2人で社会保険に加入すると掛金が2倍になりますが、長生きしないと掛け捨て部分が必ずでることになります。掛け捨て部分を出さないためには奥様は扶養にするか、どちらも長生きするかになります。奥様を扶養にすると奥様の給与は最大130万円ですので、儲かっているときは社長の給与を多くしなければなりません。そうすると所得税+住民税+社会保険を負担が大きくなります。

 さらに掛け捨てが嫌なので60歳以上でもらえるときからすぐもらおうとすると在職老齢年金制度というものがあって支給額を停止されてしまうことがあります。この制度は次の項目で取り上げます。仕組みが複雑にできていて簡単にはいかないのです。

在職老齢年金

 社長の場合60歳になったから定年になって会社を辞めるということは少ないと思います。基本自営業と変わりありませんので、働けるときは70歳くらいまでは現役で働くのではと思います。この場合年金は60歳から特別支給でもらえるときがありますので、60歳からは年金をもらいながら役員報酬ももらうということになります。こういったパターンのとき、年金の支給制限があります。これを在職老齢年金制度とといいます。

 給与をもらいながら(実際は厚生年金に加入していながら)年金をうけるときは、60-65歳のときは給与と年金月額あわせて28万円(だいたい)以上になると年金の支給停止が始まります。役員報酬が28万円以下というのは少ないので、だいたい支給停止という感じかと思います。65歳以上のときは、給与と年金月額合わせて47万円以上で年金の支給停止が始まります。これだと役員報酬は30万円くらいとれそうですが、50万円とかにすると一部支給停止になります。

 基礎年金部分は支給停止になることはありません。せっかくかけた年金も働いているともらえないのではいやになるのですが、ここで注意するのは給与と年金をもらっているとき支給停止なのですが、給与をもらっていても厚生年金に加入していなければ支給停止にならないところです。非常勤役員とかになって厚生年金をやめてしまうという方法もありますし、条件によっては給与を奥様に付け替えてしまう方法も考えられます。自分でかけた年金が働いているともらえない仕組みがあるのです。ファイナンシャルプランニングも簡単にはいかないようです。

社会保険料の金額の出し方

 社会保険料は、厚生年金と健康保険と児童手当拠出金の3つを合わせて支払います。その金額は、ネットで社会保険料月額とか検索すると年金事務所のHPが出てきますのでそこで確認できます。健康保険は各都道府県の健保協会によって少し保険料率がちがいます。東京で加入している事業所は東京の一覧表を、埼玉に事業所があるときは埼玉の一覧表をご覧ください。

 給与の額に幅がありその間に入っていると左の欄に月額等級というものがありその月額等級が計算の基礎になります。給与から控除される源泉所得税は給与の金額によってその月ごとに変わりますが、社会保険料はその月に給与が多かったからといって増えたり減ったりしません。

 社会保険料は原則年間2回変更になります。金額は年間を通して一定になります。4〜6月に支給した金額の平均をだしてその金額で年間一定にします。4〜6月の平均で出した金額をもとにして算出した社会保険料は9月の保険料から反映されます。給与の支給でいうと9月分の保険料は10月に振り替えられますので10月支給の給与から控除することになります。

 そのあとは一定で次は3月の健康保険料の保険料率の変更で変わることになります。東京都や埼玉県など都道府県単位で保険料率が決められます。それは東京都には若い人が多く給与も高く医者にかからないので財政が健全であったり、埼玉県は医者にかかる人が多いので保険料が足りなかったりというその都道府県ごとの事情により決めることになるからです。

 このように社会保険料は年に2回改定することになるのですが、それなら算定する4〜6月の給与を少なくすればよいのではないかという考えが浮かんできます。次の項目では随時改定について書きます。

社会保険の加入の仕方

 法人は社会保険加入が義務付けられています。法人は給与の支給される常勤職員がいるときは社会保険に加入します。社会保険は厚生年金と健康保険の2つになります。加入手続きは別々に行う必要はなく、管轄の年金事務所で行うことになります。

 用意する書類としては、法人の登記簿1枚・社会保険に加入する職員の年金手帳・扶養の配偶者がいれば配偶者年金手帳・扶養になるご家族がいれば名前・年齢・職業・収入などを記載しますのでわかるもの(年金事務所に住民票などを添付して提出するわけではありません)、この他にもいろいろなパターンで必要な書類は変わりますが、とりあえずは上記のものがあれば書類作成はできることになります。

 法人が社会保険に加入するとき、社会保険料の計算の基礎になる給与の額を記載します。まだ給与を支給していないのに、社会保険提出時には給与の額を予定しておかなければならなくなります。役員報酬も同じですので、社会保険に加入するときは年間の利益を予想して役員報酬を考えておきます。

会社設立後の税務の取り扱いについて

 会社設立後の税務や経理の取り扱いについて法人を中心に項目ごとに説明します。会社設立後の税務は会社の資金繰りに重要になります。利益がでても全部会社が使えるわけではありません。そして税務の扱いは複雑でわかりずらいものになります。

税金の支払い時期

 会社設立後、税金はいつ支払うのかが社長の一番の心配事だと思います。会社設立後に支払う主な税金の種類は、法人税等(法人住民税、法人事業税等を含む)・消費税・源泉所得税になります。

@法人税等

 法人税等の納税時期は、事業年度終了の日から2カ月以内です。3月決算の場合には、5月31日が納付期限になります。ただし、法人税の金額が20万円を超える場合には中間納付の必要があります。中間納付の納税時期は、事業年度終了の日から6カ月を経過した日から2カ月以内です。3月決算の場合には、11月30日が中間納付の納付期限になります。

 消費税は期間短縮制度があり分割で支払いたい場合は毎月支払いと3か月ごとの支払いができます。これは申告書を提出することになるので少し手間がかかります。通常は還付目的などで使用することが多い制度です。

A消費税

 消費税の納税時期は、法人税等と同じく事業年度終了の日から2カ月以内です。3月決算の場合には、5月31日が納付期限になります。ただし、消費税の金額が60万円を超える場合には中間納付の必要があります。消費税の金額によって、中間納付の回数は異なってきます。

B源泉所得税

 源泉所得税の納税時期は、月末で締めて翌月の10日までです。ただし、社員が10人未満の法人では、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を届け出ることにより、7月10日と1月20日の年に2回が納付期限になります。

 給与や税理士などの源泉所得税は納付の特例があるのですが、報酬にかかる源泉所得税は原則毎月支払ったその翌月10日までに納付することになります。これが少し面倒かもしれません。建築士、経営コンサル、カメラマン、デザイナー、ホステスなどの支払いに生じます。

EMS(国際郵便)の取り扱い

@EMSによる輸出

 EMSによる輸出を行った場合には、消費税は輸出免税となります。

 輸出免税の場合には、消費税が還付になる場合があります。その際に、輸出したことを証明するために輸出許可証が必要です。EMSで輸出を行い、金額が少額な場合(1つあたりの金額20万以下)には、輸出にあたり輸出許可書は存在しません。 その場合には、EMSの控えの保存が必要です。

AEMSによる輸入

 EMSによる輸入の場合には、国内では日本郵便などが配送します。消費税は、別途納付することになります。

 消費税・関税がかからないか、かかっても安い場合にはそのまま配達され、受け取り時に税金を支払います。価格が高い、税金が高額になるなどの場合には、窓口に出向いて手続きを行う必要があります。課税価格の合計額が、16,666円以下の場合には消費税・関税は免税になります。16,666円を超える場合には消費税・関税が課税されるため、納税を証明する納付書などを保管しておく必要があります。

合同会社から株式会社へ

 合同会社から株式会社にしたいという相談が、ときどきあります。合同会社を株式会社に変更すると登記が必要になり、登録免許税もかかるので、最初から株式会社で会社設立を行うほうがよいとは思います。ただ、最初は自信がないし、費用が6万円と約20万円で、14万円の差があるなら、最初だけお金のかからない方法で会社設立をしたいという社長の考えも私にはわかります。

 会社が順調に伸びてくると株式会社にしたほうがかっこよいし、知名度もあるので取引先に良いとおもいます。従業員の募集でも、合同会社より株式会社のほうが集まりやすい気がします。そんなことから株式会社にすることを考えると思います。

 株式会社に変更するための費用はどのくらいでしょう。司法書士によって費用は変わってきますが、大体15〜16万くらいのようです。ネットでは13万円くらいのところもあるようです。でも、ネットなので最低料金を行っている場合があるので、実際は15万円くらいになるのだと思います。

 合同会社を株式会社に変更するための時間は、どのくらいかかるのでしょうか。債権者保護手続きで債権者への公告が1か月必要になります。登記の時間を考えると2か月弱の期間を必要とするようです。ただ、その間、会社がなくなるわけではなく、通常通り営業できますので特に問題はないと思います。

 手続きは、通常、司法書士が行います。ご自分ですることもできますが、やったことがないことをするのは時間がかかると思います。

 株式会社になると名称が変わることになりますので、年金事務所の名称変届出、労働保険の名称変更届出、市役所、県税事務所、都税事務所、税務署への異動届出、銀行の通帳の会社名変更、封筒や名刺などの名称変更などいといろなことをしなければならなくなります。

 お金と時間がかかります。それでも、組織変更が必要な場合にはやらないといけないと思います。

会社の廃止

 始めた会社を辞めるときはどうなるでしょう。会社設立をするとき最初に心配されることだと思います。会社の存続期間は20年後には10%といわれているようです。でも、私のお客さんを見ていると、そんな割合で会社が廃止されているようには思えませんので、存続期間にはオーナーが変更になったり、合併だったりとかで存続しているけどそういったものを除いているのかもしれません。

 会社を廃止する場合ですが、清算して登記を抹消するという必要があります。でも、この清算をする場合借入金などがあると簡単に清算といかなくなります。負債がなければ大事にはならないです。極端な話、会社辞めますだけでいいと思います。従業員もいませんし、取引先には別のところにいってもらえばよいだけです。

 従業員がいて給与を支払っていて、銀行からの借入金があり、売掛金と買掛金があるとなると、会社の清算は困難になります。最初に考えることは立て直す、次に売却できるか検討するという感じかと思います。それもできないとき、続けていると負債が増えてしまうという場合には、法的な手続きを取ることになります。

  会社を清算するとき、代表者が別の会社の代表をしていたらどうなるかという問題があります。なぜかというと、会社を清算する場合、銀行からの借入金などがあると、個人保証をしている場合がほとんどのはずですので、会社と一緒に代表者個人も自己破産する必要が出てくるからです。

 会社と同時に個人が自己破産の手続きを開始すると、以前の法律では役員の欠格事項になっていたようです。現在は、株式会社と合同会社で取り扱いが異なり、株式会社ですと欠格事項ではないので、いったん退任してすぐ就任するという形式的な手続きで、引き続き株式会社の代表者を継続できます。民法の委任契約がいったん終了するということのようです。この場合は、司法書士の手数料と代表者役員の変更の登録免許税がかかります。それだけで大丈夫です。

 合同会社の業務執行役員で1人だけしかいないときは少し面倒になります。なぜかというと、会社法で法定の退社事由を定めているからです。

 任意的に退社をする他に、合同会社の社員は、次の事由で退社することになります。(会社法第607条1項)。

  1. 定款で定めた事由の発生
  2. 総社員の同意
  3. 死亡
  4. 当該合同会社が消滅会社となる合併
  5. 破産手続開始の決定
  6. 解散
  7. 後見開始の審判を受けたこと
  8. 除名

 この中の5の破産手続き開始の決定に該当してしまうからです。そうすると、1人しかいない社員が退社するのですから会社は清算しなければならなくなります。

 でも、定款に5(6,7も)の理由で退社しない旨の定めが可能ですので、その旨が記載されていれば、退社せずにそのまま会社を継続することができます。しかし、初めからそんなことを想定して定款を作ることはありません。そうすると、破産手続きを開始するかもしれないという前に同意書・決定書で議事録を残し、5の理由で退社しない旨を追加することになります。

 この辺は、通常、弁護士や司法書士の意見を聞きながら行うところと思います。議事録を作成しておくだけで会社の存続が継続できるのですから、知っているのと知らないのでは大きな差になります。

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