会社を設立する場合しっかりした事業計画が必要になります。経営者の頭の中にいつもあるとは思いますが、それを目で見えるように数値を使い具体化することがよいと思います。成熟した社会だと思います。すでに市場に今までと違う新しいものがどんどん生まれてくるような余地はないと思います。
だからこそ何をするのか、どこから利益が生まれるのか、なぜこの事業をするのかというしっかりとした計画が必要になると思います。しっかりとした計画で行ってもうまくいかないのが商売です。だからうまくいったときと、うまくいかなかったときどするのかくらいの計画は必要になると思います。特に借り入れをして事業を始めるときは返済できるのか、その返済する確実性はどこにあるのかをはっきりさせなくてはなりません。
会社をつくるとき成功するために行うのが普通だと思います。一か八かでやってみるようなことはおお勧めできません。成功の確率が60%以上で失敗しても生活に困らない範囲で計画を立てるべきだと思います。成功の確率60%としたのは、複雑な社会で絶対ということは考えられないため、せめて半分以上の可能性があるところまで詰めるべきということから60%としているだけです。
事業計画のほとんどは、融資の申し込みの時必要になるか、会社設立・独立・開業するとき、社長の頭の中にある計画を検証するため必要になるものかと思います。独立開業するときは漠然と考えていることを書き出して数字にしてみると自分の漠然としているものが見えてきます。動かないであろう数字、営業によって変わってくる数字などわけて考えると、うまくいったときとそうでないときの数字が大雑把にでてきて現実味がわいてきます。独立・開業・会社設立時に自分の計画を検証するために計画を作るのは人に見せるためではありませんので詳細に文書など作るところまでは必要にならないと思います。しかし融資を受けるためとなると違ってきます。
本来であれば自己資金だけで借入をしないことが安全です。それはわかっていても借入をしないで独立資金がたまるまで待っていては年齢の問題や今ある仕事関係の受注ができなくなります。そこで借入をして利益で返済していくという計画が必要になってきます。返済するので、過大な借り入れは不要です。必要十分なところで計画を立てていくことが現実的です。小さく初めて大きくしていくことが基本になります。
銀行提出用の事業計画を作成するとき、日本政策金融公庫や県制度融資などでは所定の事業計画書が用意してあります。日本政策金融公庫ではHPで様式や記載例が業種ごとに掲載してあります。まずその記載例をみて同じように作成することで足りると思います。しかし用意されているものは最低限の内容把握用のものということになると思います。銀行が用意している様式に書かれた内容の実現性が社長の経験や実地調査によって行われているかわかる証拠書類が計画の確実性を高めます。
その証拠書類とは、社長が業界の状況・地域の状況・雇用するときの条件による人の状況・請け負う仕事の確実性と継続性の書類(どのくらいの付き合いがあり、どのくらいの確実性で仕事が来るかそれはどうしていえるかを具体的に説明します。すでに受注仮契約書があれば良いです。)・設備投資に使うお金の見積もりとなぜその業者にしたのか・運転資金6か月の内訳(その項目ごとの積算単価算出の根拠)・地域の競合店との差別化・地域の特性など自分の足で調査した事項が証拠として積み上げられることが必要です。また社長の生活資金が独立開業後どのくらい用意できているかも重要なところになります。生活資金がないのであれば返済計画は確実ではなくなるからです。
また社長の会社設立・独立開業前の個人の通帳にどのくらいの預金残高があるかも重要になってきます。会社設立・開業前にどのくらいの自己資金を用意していたかによって貸し出しの上限が変わってくるからです。自己資金がなくても会社設立後すでに取引先との間で売上が定期的に出ているようでしたら問題は少ないのですが、自己資金がないところでしかも会社設立後売上がないところでの融資となると、何も返済の担保となるものがなくなってしまいます。基本無担保無保証での融資の審査になると思いますので、自己資金がどのくらいあるかは貸す側からすれば重要な項目になります。
日本政策金融公庫では以前は自己資金の2倍までの貸付と創業貸し付けについては自己資金の残高に厳しい基準を設けていました。28年には自己資金の1/10までと基準は緩くなったのですが、最低ラインの基準であり、やはり自己資金は多いほうが融資の可能性は高まります。自己資金が少ない場合にはすでに請け負っている契約があり売上高が経常的に発生する可能性が高いなど、自己資金の少なさを補完するものが必要になると思います。
融資の際は事業計画書など書類の審査と面接の2つで審査が行われます。面接のときの注意点は、時間に遅れない、自信をもってはっきり話す、質問に明快に答える、自分の経験から答える、熱意をもって話すなど基本的なことになります。
事業計画書を作成するときの項目ごとに見ていくと、
①代表者の過去の経歴:これは重要です。経歴からこれから始める業種にどれだけ確実性があるか判断されるからです。建設業に長く従事していた人が運送業を始めるとなると理由がはっきりしていないと疑問が出てしまします。また同じ業種での独立開業であれば創業融資などの申し込み資格の条件にあってきます。
②事業コンセプト(事業の基本的な考え方):ティーダ総合会計であれば、料金とサービスの明確化、低料金の記帳代行が事業コンセプトになると思います。事業全体をどのように構成するかを、その構成には他との差別化や新規性も入っていることが望ましいと思います。
③市場のニーズについて:業種によって調査する市場の範囲が変わると思います。地域密着であれば実際地域にある同業種のお店などでどのような状況にあるか調べることが必要になるともいます。市場のニーズは細分化され簡単にはわからないことが多いのですが、わからないでは事業計画は立ちませんのでできるだけ実地で調査したデータを集める必要があります。
④顧客ターゲット:ターゲットをどこに絞るのかは、市場のニーズがどこにあるのかと自己のできること強みは何か、資金はなどとの兼ね合いになってきます。どこに需要があるかわかりませんので、できるだけ広く取りたいというのが社長の気持ちになると思います。しかしターゲットを広く取ると資金がかかるし、人も多くしないといけませんし、ノウハウもそれだけ多く必要になります。できるだけターゲットを絞り込み小さく始めることが最初は必要です。ターゲットを絞り込み始めてみて、そこから出てくる需要に対応できる部分を拡大していくようにしていくほうが安全です。ターゲットの絞り込みにはやはり自分のつよみよわみの分析と近場の状況を調査して行うことになります。
⑤事業の独自性・新規性・差別化:この部分は唯一というものではなく、同業他社と比較するとどうかとか、この地域ではどうかとか、まだやっている会社が少ないとかというレベルのものです。独自性や新規性といっても日本でわが社だけですとかというレベルではありません。そうなると書きようがなくなってしまいます。やろうとしていることの特徴や他と比較するとこのような点に力を入れているので、結果需要に対応でき売上げが伸びるという感じで書くことになります。
⑥マーケティング:ターゲット(お客様の範囲)が決まったら自分の商品をどうそのお客様にあることをわかってもらうかという活動になります。お客様が商品を認知しなければ購買活動はおきませんのでとても重要なものになります。どんなに良い商品でもお客様がほしいと思っていても、広告宣伝をしなければお客様はその商品があることを知りません。よって売れません。
広告宣伝にはどのような方法でいつ行い、いくら予算化するかという計画をたてます。社長にとって広告宣伝は腰の引けるところです。効果がない場合お金と時間が無駄になるからです。広告宣伝には、看板・折り込み・ネット・はがき・電話など多種ありますし、どの媒体を使うかでもターゲットに届く可能性が変わってきます。届かなかったときでもその媒体が悪かったのか、それとも届いているのに差別化できないのかなど見ている人にアンケートを取ることができないので結果からその結果はどうして生じたのか考えるしかありません。私もいくつかの媒体で広告宣伝を行い効果のないものをやめていく方法をとりました。私の業種に、看板・タウンページ・投げ込みは効果がありませんでした。ダイレクトメールは効果があるのですが、時間と費用が掛かりすぎます。続けていける媒体かと考えると費用と効果の関係で無理があると考えました。この場合でもやり方の工夫で何とかなるとは思うのですが、それを試すには時間がかかります。
広告宣伝マーケッティングは販売するという最も重要なものになりますが、市場という動いている需要を理解していかなければならない難しいものだと思います。結果やってみて考えるの繰り返しになると思います。
⑦事業スケジュール:いつから何を始めるか次に何を準備するかなど直近の1年は細かくスケジュールをたて2〜3年目では想定される計画を立てます。事業スケジュールに無理がないか確認しながら資金繰りの計画も立てていきます。この事業スケジュールはそのまま資金繰票として月別の一覧表にしていきます。
事業計画書を完全に作ってもうまくいくわけではありません。結局社長が駆けずり回る中で実際とはこんな感じで違ったのかと、何が変わればよいのかと、その都度考えながら事業計画を変更していくしかありません。小さな変化をみるためにはやってみて結果を見なければわかりません。やってみることが大切なのですが、時間と資金は無限にはありません。優先順位といってもどれが優先なのかはっきりわからないことが多いはずです。難しいものからやっていく、簡単なものからやっていく、順番など気にせずできるものはすべてやるなど、ビジネスの実務書を読んでも幾通りもの考えがあります。答えがありません。商売には答えがないので間違いも正解もありません。正解がありませんので失敗してもやり直せばよいことになります。だからやり直せないような失敗をしないことです。小さく初めて大きくする一気にやらない、私は一か八かは好きではありませんのでそう考えています。