以下、A調査官(税務署)、B税理士、C社長(建設業)との税務調査でのやり取り。
・・・前回の続き・・・
A調査官:〇月〇日のスケジュール帳には、人工が3名記載されていますが、従業員でしょうか下請けでしょうか。
C社長:従業員が2名で下請けが1名になります。
A調査官:外注の請求書を確認しましたが、〇月〇日の工事現場の下請けはD社の請求書に記載がありますね。
※建設業における税務調査の常套手段として、出面表と売上・外注の請求書を照合して、売上に対応しない外注費を未成工事支出金として否認することは、必ずといっていいほど確認される。
C社長:〇月〇日の工事の下請けは、D社の方が1名来ていたと思います。
A調査官:この外注費は、買掛金で計上されていますね。
B税理士:(D社の請求書と元帳を確認して)そうですね。買掛金で計上されていますね。
A調査官:〇月〇日のD社の外注費は、未成工事支出金として計上されていますか。
B税理士:(D社の請求書と元帳を確認して)これは、未成工事支出金として計上されていない可能性が高いですね。
A調査官:それでは、〇月〇日のD社の外注費2万円を未成工事支出金として、指摘事項とさせてください。
B税理士:(C社長を裏へ呼び出し)〇月〇日の工事について、税務署側はD社の外注費2万円を「期ずれ」として否認しようとしています。
※「期ずれ」とは、本来は今期に計上すべき売上などが翌期以降に計上される場合に生じる。「期ずれ」は税務調査で重点的に調査される。
C社長:えっ!そんなに細かいところも見るんですか?
B税理士:そうなんです。これに関しては、反論するのが難しいかと思います。
でも、安心してください。「繰越欠損金」の残高もありますので、この件に関しては追徴税額は発生しません。
※一定の青色申告している法人について、赤字を10年(又は9年)翌期以降に繰り越すこができます。これを「繰越欠損金」といいます。C社には繰越欠損金があったため、その金額の範囲内の所得では法人税は発生しません。
C社長:そうなんですね。それなら安心しました。
B税理士:〇月〇日の未成工事支出金2万円については、今後の税務調査の進展にもよりますが、ひとまず保留としましょう。
C社長:了解しました。
次回へ続く。
(2024年12月9日)