修士論文の紹介:「不法行為と損害賠償を巡る課税上の諸問題」(56)
今回は修士論文の第2章第1節第2項の1回目を見ていきます。しばらくは、不法行為の行為者を巡る課税上の問題点を論じていきます。今回も、不法所得に対する課税の適否を論じています。第2項では、不法所得を所得概念から考察しています。
「第2項 所得概念からの考察
不法所得に対する課税の適否を判断するためには、まず、「所得」そのものの概念を明確にしなければならない。
第一に、「所得」は税法上の固有概念であり、「ある利得が所得であるかどうかは、その利得の原因をなす行為や事実の法的評価をはなれて、実現した経済的成果に即して判定すべき」1であるという学説がある。
また、所得概念については、「経済的利得がすべて所得となるのではなく、社会的な秩序の力によって財産権の内容をなす経済的利益がその者の継続された事実的支配の裡に存って、担税力を認めうる程度にその利益を享受していると認められるような客観的事情が備わることによって課税適状を生じ初めて所得となるとなりうる。」2との見方もある。
前者の説によれば不法所得に対する課税は容認されることとなるが、後者の考え方によれば、場合によっては課税が否定されるということになるのではないだろうか3。」
1 金子宏『租税法(第4版)』(弘文堂)112頁
2 松沢智『租税実体法』(中央経済社)118頁
3 ただ、後説の松沢教授も「経済的利得の法的支配」という観念を用いられて課税を可能とする考え方を採られている。(松沢智・前掲注6・118頁参照)
将棋の藤井聡太王位・棋聖のニュースが楽しみです。最近では、叡王戦でタイトル奪取まであと1勝としていましたが、豊島叡王・竜王に2勝2敗のタイに持ち越されました。王位戦でも豊島竜王・叡王と戦っており、藤井聡太王位がタイトル保持まであと1勝としています。竜王戦も藤井聡太王位・棋聖があと1勝すれば、豊島竜王に挑戦することになります。藤井聡太王位・棋聖と豊島竜王・叡王と渡辺名人の3人は、現在の将棋界でトップ3を走っています。この先、藤井聡太王位・棋聖が8タイトルの独占まで独走するのか、豊島竜王・叡王と渡辺名人が独走を止めるのか、目が離せません。
(2021年8月24日)