コーヒーブレイク:「開運!なんでも鑑定団」の税務
テレビ東京系列の「開運!なんでも鑑定団」が好きで、以前は実家の父親と毎週のように見ていました。お宝が予想と反対に高値だったり、偽物だったり楽しく見ています。この番組を税務的な観点からみてもとても興味深く、いろいろ勉強になります。
税務的な観点から見る場合に、3つのことが気にかかります。1つはもちろんお宝の鑑定額です。まず、お宝の鑑定額が高値だったからといって、直ちに税金がかかるわけではありません。鑑定額のことを税務的に言うと評価損益ということになります。税務では、原則として、評価損益には課税されません。評価益のことを含み益ともいい、含み益には担税力(税金を負担する力)がないというのが税務の考え方の原則です。もちろん、評価損を事業の経費にするといったことも原則的にできません。
ただし、含み益が「実現」した場合には、税金が課せられることになります。含み益に課税される状況には、主に3つのケースあります。それは、お宝を売却した場合、相続した場合、贈与した場合の3つです。これが税務的な観点から見た2つ目の視点です。つまり、お宝を今後どうするのかということです。しばしば、司会の今田さんが、「このお宝はどうされますか?」と尋ねることがあります。実は、この質問に対する答えが重要なのです。よくある答えが、「お宝をすぐに売って海外旅行に行きます」といったものです。この場合には、売却によって含み益が実現するので、所得税の譲渡所得というものになります。書画骨董は30万円を超えるものを売却した場合には、譲渡所得の対象になってきます。所得税の確定申告が必要になり、所得税が課せられる可能性があります。
また、「このお宝は家宝として大事にします」という答えもよく見受けられます。この場合には、お宝を相続することを明言しているようなもので、将来相続財産として相続税が課せられる可能性があります。特に、年配の方が依頼人である場合には、注意が必要だと思います。ただし、なんでも鑑定団の鑑定額が、そのままお宝の財産評価となるわけではありません。しかし、税務署は、お宝の財産評価の目安として目をつける可能性はあります。「お宝は孫にあげます」というような答えもしばしば見受けられます。この場合には、お宝を贈与することになるので、贈与税が課せられる可能性があります。
3つ目の気になる視点が、お宝をどのように手に入れたかということです。よくある答えが、「借金のカタとしてもらった」というものです(偽物であることが多々あるのですが・・・)。この場合には、借主が債務の免除を受けたことになり、借主に贈与税が課税される可能性があります。ただし、借主が資力を喪失して債務を支払うことが困難な場合には、贈与税は課税されません。借金のカタとは、担保としてお宝を預かっていることになるので、借金を全額返すというような場合には、お宝を借主に返還しなくてはならないかもしれません。「骨董店で安く買った」という答えも良く見受けられます。この場合に大事なことは、その領収書を保管していることです。前述の通り、お宝を売却する場合には、所得税の確定申告が必要です。領収書を保管してあれば、その金額を譲渡所得の取得費として控除できるのです。領収書がない場合には、売却価格の5%しか取得費として控除できなくなってしまいます。これは、「お宝を古い蔵で見つけた」場合も同じです。「インターネットオークションで買った」場合には、購入した記録が残るので、取得費に関しては問題がなくなります(偽物であることが多いのですが)。
ただし、これまで書いてきたことが問題となるのは、お宝が300万円など高額である場合です。お宝が偽物で2,000円だったという場合には、税務的にはなんら問題はありません(鑑定に出した当人にとっては大きな問題ですが・・・)。もし、500万円で購入したお宝の鑑定額が1,000円だったという場合には、相続税の財産評価は下がるかもしれません。お宝が高額であることは、税務的にはあまり喜ばしいことではないのかもしれません。
今回の写真は、連れの実家のある埼玉県上里町を散歩した時のものです。ほどほど田舎の風景なので気に入っています。今日は埼玉県民の日ですが、もちろん弊社は営業しています。疲れもたまっているので、休みがほしいです。 (2017年11月14日)