以下、A調査官(税務署)、B税理士、C社長(建設業)との税務調査でのやり取り。
・・・前回の続き・・・
B税理士:A調査官、お待たせしました。未成工事支出金2万円については、とりあえず保留とさせてください。
A調査官:分かりました。こちらは指摘事項として保留させていただきます。
A調査官:(続けて)〇月〇日の工事については、従業員の方が2名従事されていますが、こちらも未成工事支出金ではないですか。
B税理士:確かに、労務費として工事原価に計上されるような場合でしたら、従業員の賃金も未成工事支出金になるかと思います。C社長、この2名の従業員の方は、工事現場以外にも事務などの一般管理業務も行っていますね。
C社長:そうですね。この2名の従業員は、事務作業などの一般管理業務も行っており、いつも工事現場にいるわけではないです。
B税理士:この2名の従業員の方は、毎月固定給でしたよね。
C社長:そうですね。従事した内容に係らず、固定給で十分な給与を支払っていますよ。
B税理士:そうすると、〇月〇日の工事に従事した2名の従業員の方は、未成工事支出金として計上するのは妥当ではないと思います。
理由としては、この2名の従業員の方は、工事現場以外の事務などの一般管理業務を行っていること、給与は毎月の固定給であること、固定給のうち〇月〇日の工事に配賦する金額の合理的基準の判断が難しいこと、工事原価の労務費ではなく一般管理費に区分して経理されていることが挙げられます。
A調査官:なるほど・・・。そのような理由があるのでしたら、この2名の従業員の方の未成工事支出金については持ち帰って検討させてください。
A調査官:(続けて)それでは、D社の外注費の消費税についてですが、これは翌期の仕入税額控除になるのではないですか。
B税理士:それには異議があります。消費税基本通達11-3-1、11-3-5により、継続適用を条件として工事の引き渡しを行った期の仕入税額控除とする処理が認められていると規定されています。
※消費税基本通達11-3-1、11-3-5
建設業者が建設工事等を請け負って工事を行う場合には、工事期間中の建設資材の購入費や下請先に対する外注工事費などは、未成工事支出金勘定で経理しておき、請け負った建設工事等が完了し、目的物を引き渡した時点で、売上げに対応する完成工事原価に振り替える経理処理をします。
消費税法においては、この未成工事支出金勘定に含まれる課税仕入れの額は、原則的には資産の引渡しを受けた日や下請外注先が役務の提供を完了した日の属する課税期間において仕入税額控除の対象とすることになります。
ただし、未成工事支出金として経理した課税仕入れの金額を、請負工事による目的物の引渡しをした日の属する課税期間の課税仕入れとしているときは、継続適用を条件としてその処理が認められています。
A調査官:そうでしたね・・・。この消費税の件は撤回します・・・。
※上記のように、建設業の税務調査においては、未成工事支出金の確認が必須になります。小さな工事も税務調査の対象となることがあります。余計な追徴税額を取られないように、反論すべきところはきちんと説明できることが必要になります。
(2024年12月16日)