今回は久しぶりにコーヒーブレイクです。次回から、修士論文の第3章の総括に入るので、少し中休みをします。
大部分の会社の経営者が思っていることは、「会社の利益は上げたい」でも「税金は払いたくない」ということだと思います。もっともだと思います。利益を上げれば、会社の体力もつきますし、得意先と取引をするうえでも有利になります。会社の社会的評価も上がります。一方で、税金を支払うことはキャッシュが出ていくだけで、目に見える見返りがありません。
通常は「会社の利益を上げる」ことと「税金を払いたくない」ことは、相反することになります。難しい言葉で、トレードオフの関係にあるといいます。法人税等(所得税もですが)は、ざっくり考えると利益(所得)に対して税率をかけることにより算出されます。つまり、利益(所得)が上がれば、税金も上がるのです。
では、何も対策がないかというと、そういうわけでもありません。繰越欠損金を有効に使えば、会社の利益を上げつつ、税金の支払いを抑えることができます。繰越欠損金は、決算で生じた赤字(欠損金)を翌期以降繰り越せるものです(一定の青色申告の会社に限られます)。つまり、赤字が生じた翌期以降に黒字になった場合に、繰越欠損金と相殺ができるのです。
これをうまく利用した会計的手法が一つあります。それは、V字回復(ビッグバス)というものです。V字回復(ビッグバス)は、ある決算期において、費用や損失を過剰に計上して、大きな赤字状態を作ります。そうすれば、税務上否認されない限り、繰越欠損金も大きく作ることができます。そして、その翌期に業績を大幅にアップさせるのです。そうすれば、業績をアップさせた決算期には、利益が上がっているけれど、税金を抑えられるという状態を作ることができます。V字回復(ビッグバス)は、何度も繰り返して使える手法ではありませんが、有効に用いることによりカンフル剤のような効果が期待できます。会社の経営成績も良くなったようにみせることができます。
繰越欠損金は、税法上も認められた非常にありがたい制度です。繰越欠損金を効果的に使うことは、タックスプランニング(税金のコントロール)のうえでも役立つことになります。「利益は上げたいけど、税金は払いたくない」も夢ではないかもしれません。
(2025年9月8日)