7月決算の会社との会話です。ビルを4千万円で購入するのですが、7月31日に消費税の課税仕入れができるかどうか。
<経理課長>
7月中に3千万円のビルの物件が見つかり、口頭で購入する旨を相手に伝えました。契約書は7月30日の日付で作成し1割の4百万円を支払いました。登記の所有権移転は、8月10日に銀行で司法書士と一緒に書類交換し押印し残金をその日に支払いました。
この場合引き渡しは7月30日でよいでしょうか。そうすると今期の決算の消費税の課税仕入れができると思います。
<会計事務所>
固定資産の課税仕入れの原則は引き渡しの日です。引き渡しの日は通達では固定資産の通達ではなく棚卸資産の通達を適用することになっています。
通達(9-1-2)には
当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。
(1) 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日
(2) 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日
とありますので、今回の場合(2)を適用すると7月3日になります。
しかし通達9-1-2には、相手方において使用収益ができることとなった日、というものもあります。もっともこの通達は譲渡の日を決めるもので課税仕入れを言っているものではないのですが、相手が譲渡したら受け取ったほは課税仕入れということもありますのでこの通達で考えてもよいと考えます。
<経理課長>
契約というのは双方合意のあったときに成立ということですから、契約書を作った7月30日に効力が発生していると考えるのが普通だと思うのですが。
<会計事務所>
確かに通達9-1-13でも契約書の効力が発生している日に譲渡していることを認めるという但し書きがあります。ここだけみると契約書を作成したということは合意したのだからその日から使用収益が自由にできて自分のものと読める気がします。
<経理課長>
それでしたら7月30日で課税仕入れでよいでしょうか。
<会計事務所>
所有権移転登記を7月中にやってもらえれば問題なかったのですが、ぎりぎりのところで判断すると契約書の内容と実態で判断することになると思います。実体は実際孫倉庫を7月30日に使用しているかということです。それと効力が発生するのが6月30日ならそのことが契約書に書かれているかどうかです。登記は8月3日にするが7月30日の時点でこの契約の効力は発生し、自由に倉庫を使用してよいという文言です。
だとしても原則の9-1-2の通達の表現は満たしていないので、7月30日にするには腰が引けます。
<経理課長>
不動産会社が忙しかったみたいで、決算月をまたがないでほしいといったのですがこうなってしまいました。今期でも来期でもどちらにせよ消費税は引けるのでしたらあまりグレーなことはやらないでいいです。でもどこかで契約は口頭でも成立するとあったので、本来なら口頭で申し込んでしても売るといったのは7月10日くらいです。その日を契約成立日としてもよかった気がします。
<会計事務所>
契約書作成の日より前に口頭で契約は成立していたということでしょうか。そうするとさらにややっこしくなると思います。やはりそのことを契約書に書かないといけないと思います。作成費は7月30日だが契約の合意は7月10日で10日から効力が発生し自由にビルを使ってよいと、そしてその間は賃料など取らないことが必要だと思いますが、そこまでやると税務署と言い争いになると思います。
<経理課長>
話だけです。税務署に時間とられても儲かりませんので。
<会計事務所>
7月30日契約書にその内容があればできなくないとも思うのですが、こういう場合は、事前に契約書を税務署に提示し課税仕入れをすることを断ってからするのがよいです。